Life is like a garden

Perfect moments can be had, but not preserved, except in memory.

『カラマーゾフの兄弟』を読み終えて

亀山郁夫訳の『カラマーゾフの兄弟』1~5(光文社古典新訳文庫)読了。
面白かった!20日たらずで一気に読み終える。ドストエフスキーの筆力と
亀山郁夫さんの素晴らしい翻訳が相まった至福の読書体験だった。
5巻巻末の訳者の解題がまた素晴らしく、微に入り細を穿つ解説を読むと、
読み終えたばかりなのに、始めからじっくりと読み返したくなってくる。

第12編の文中に出てきた「ひた走るトロイカ」という表現の的確さと
滑稽さにおもわず声を出して笑ってしまったが、読んでいるあいだは
ずっと、ひた走るトロイカに乗り凍った大地を走っているようだった。

高3のときに『罪と罰』を読んだときは、最初入り込めなかったものの、
途中からぐいぐいひっぱられるよう引き込まれていったが、今回は、
読み始めたとたん1ページ目から魅了され、繰る手が止まらなくなる。

私利私欲、嫉妬、羨望、怨念、殺意、信心、高潔、純真、潔白……
多くの人が抱えるさまざまな感情や性質をつまびらかに描き出し、
むせ返りそうなほどの人間くささにまみれたこの世をひとつの物語に
まとめあげた著者の筆力もさることながら、その物語をテンポよく、
恐らく原書で読むのと変わらぬであろうリズム感で一気に読ませる
亀山郁夫さんの訳がじつに見事で読むことができて本当に良かった。