Life is like a garden

Perfect moments can be had, but not preserved, except in memory.

【英文精読教室】『英文精読教室』番外編トークイベント

5月20日(金)に開催された柴田元幸先生の「【英文精読教室】『英文精読教室』番外編トークイベント」(丸善ジュンク堂書店オンラインイベント)のアーカーイブを視聴、辞書・辞典にまつわる情報を多々伺うことができましたので、情報をシェアしたいと思います。
【イベントで紹介された主な辞書・辞典】
・『英語会話表現辞典 警察官編』(旺文社)
:相手が難色を示す/They don’t seem willing to cooperate.など。(『柴田元幸ベスト・エッセイ』(ちくま文庫)の中で紹介されている)
・The Compact Edition of the Oxford English Dictionary
付属のルーペが付いてくるOED縮刷版
・『アメリカ俗語辞典(研究社)』
約7000人(その9割は大学生)の協力を得て訳語を集めた辞典。例:「日本では不美人やオールドミスをさす俗語が多いが、アメリカでは、それにあたる俗語は少ない」など
・『英語図詳大辞典』(”What's What”)(小学館
物の名前辞典。例:凧の部位や、カウボーイやアメリカンインディアンの衣装の部位の呼び名などの訳語説明
・『英米風物資料辞典』(開拓社)
「コーヒー、茶の飲み方」、「食卓でしてはならない事」(鼻をかむ、ナイフで食べ物を口に運ぶなど)等の作法など様々な風物について書かれている。
・『最新日米口語辞典』(朝日出版社
こちらの辞典は、柴田先生がこの1年くらいの間で出会った辞典のなかでも、とくにいいなと思った辞典のひとつだそうで、「一語の英単語に対して、一語の日本語を当てはめようとすることがそもそも間違っている」として、「切り口」を紹介。
「切り口(focus)」
Let’s change the advertising angle.(広告宣伝の切り口を変えてみよう。)
The perspectives of her essays are all interesting.(彼女のエッセイはどれも、切り口が面白い。)
His plan has a new catch to it.(彼の企画は切り口が斬新だ。)
Let’s just change the focus a bit.(切り口をちょっと変えてみよう。)
ほかにも、最近出会った辞典でとくにいいと思った辞典として『コンパスローズ英和辞典』や“Green's Dictionary of Slang”(オンライン)を紹介
英語の類語辞典のお薦めとして、Random House Thesaurus、日本語の類語辞典のお薦めとして、『角川類語新辞典』(角川書店)を紹介
また、オンライン辞書の説明では、KOD(Kenkyusha Online Dictionary)について、各辞書の特徴について詳しく触れられたほか、新たに加わった『コンパスローズ英和辞典』の特徴や利用法を丁寧に説明してくださったことで、改めてKODの良さを再認識しました。
【印象に残ったエピソード】
(翻訳家の岸本佐知子さんから伺った話として)岸本さんが翻訳学校で学んだことで役に立ったこととして「訳語を考えるということは、いかに辞書から離れるかということ」
【印象に残った質疑応答】
Q:「英和翻訳でどんな辞書にも載っていない訳語をあてるとき不安になりますが、勇気がいりますか?」
A:「いや、そんなことはないですよ。むしろ、辞書に定義がいくつ並んでいようと、それ以外の言葉を使うということは結構あるべきこと。辞書の定義から離れることに不安になるということは、単語の意味がぴんときていないからなのかもしれない。ぼくも化学や生物学などの専門用語だったら、辞書の定義から離れられない。訳語から離れるのは難しい。その単語がどういう顔をしているかを知ることが先決」
最後に、トマス・ハーディの『アンドリー爺さんの楽師体験』(『英文精読教室』の第6巻「ユーモアを味わう」より)の朗読があり、英語を表示しながら読んでくださったため、朗読はもちろんのこと、目と耳で対訳を楽しめる大変良い体験となりました。柴田先生のお話を伺い、これからますます辞書をしっかり引こう、と身の引き締まる思いがしました。聴くことができて良かったです。