Life is like a garden

Perfect moments can be had, but not preserved, except in memory.

料理について

独身時代、自分は料理が好きなのだと思っていた。

ひとり暮らしをしていたときにはほぼ自炊をしていたし、

料理本を見ながらレパートリーが増えるのが楽しかった。

遊びに来た友達にふるまっては喜ばれるのも嬉しかった。

 

ところが結婚して毎日料理を作るようになったら事態は一変した。

私は洋食が好きなのでどうしても洋食に偏りがちになっていたが、

夫は和食派で、チーズやクリームソースなどがかなり苦手だった。

しかも甘いものが大の苦手で、甘めの味付けもダメなようだった。

それでも、2人のときにはどうにか折り合いをつけて作っていた。

この頃はまだ、料理が好きだと胸を張って言えていた気がする。

 

料理の難易度がぐんと上がったのは2人目が生まれたあとだ。

彼女はドレッシングもケチャップもマヨネーズもソースもダメで、

カレーやミートソースも食べない。エビフライもハンバーグも

食べないので旅行先で出るお子さま向け料理は私が食べていた。

缶詰、レトルト、加工食品、冷食、お惣菜はすべてダメだった。

 

ミネストローネを作るときはまずコンソメ味で完成させて、

彼女の分だけ小鍋に分けてから大鍋にトマト缶を注ぎ入れる。

冷凍の餃子や焼売、レトルトのミートソースなどを食べず、

お惣菜も買ってきたコロッケやトンカツには手をつけない。

 

最初はミートソースやコロッケが嫌いなのかと思っていたが、

実家に帰省したとき、母の手作りのミートソースやコロッケを

おいしそうに食べる姿を見て嫌いじゃないんだとびっくりする。

手作りだと、餃子もトンカツも本当においしそうによく食べる。

それに、基本的に野菜は好きでとくに根菜が大好きだったので、

さいころには煮物をよく作った。ピーマンやネギなど、普通

子どもが嫌がりそうな野菜もよく食べていた。

要するに、驚くほどヘルシーな食生活なのだ。

 

私は下の子が幼稚園に入るタイミングで在宅翻訳を始めたので、

軌道に乗るまでは結構いろいろ慌ただしかった。彼女が1歳に

なると同時に卒乳してブラッシュアップも兼ねて翻訳学校に通い、

そのうえ「仕事獲得に有利になるかも…」と軽い気持ちで英検1級

を受けたら1次に受かってしまい、その後1年間は2次試験の勉強に

追われることになった。そんななかで私も随分頑張った気がする。

 

私がいまコロッケや焼売を手作りしているのは彼女のおかげだ。

いまでも夕飯を訊かれて「唐揚げ」、「餃子」、「コロッケ」等

答えると、必ず彼女は「手作り?」と尋ねる。冷食が苦手なので

来年からのお弁当が戦々恐々だが、なんとかやっていくしかない。

 

中学生になった今は、だいぶ食べられるようになっている。

いまではカレーは大好きだし、野菜をいれて炒めるシリーズ

も大活躍している。冷食も、餃子は食べられるようになった。

お惣菜も、焼売やコロッケは食べないが、トンカツや唐揚げは

食べるようになり、昔に比べると本当に、本当に楽になった。

それでも、手作りのコロッケや焼売の日は彼女のテンションが

あがるのがわかるので、余裕のある日は作るようにしている。

 

そんな感じで落としどころをみつけて日々料理をしているので、

料理が好きかと訊かれても昔のように好きだと言えなくなった。

私の好物はあまり家族に喜ばれないものが多いので作ってないし、

自分の食べたいものだけ作っていた頃と今とでは明らかに違う。

それでも喜んでくれると嬉しくなるし、よしまた作ろうと思う。

 

そして、いまは彼女にとても感謝している。

もし彼女が何でも食べられるようだったら、きっと私は楽な方に

流れて今ほど料理をしていなかっただろう。ひょっとすると毎日が

総菜や加工食品、冷凍食品のオンパレードになっていたかもしれない。

現に彼女が冷凍餃子を食べるようになってから餃子はほぼ作っていない。