Life is like a garden

Perfect moments can be had, but not preserved, except in memory.

乳歯の続き

昨晩、決めあぐねていた子供たちの乳歯を処分した。
何年か前に片付けたときにも、どうしよう…と迷い、
結局そのまま棚に戻したが今回はようやく手放せた。

そもそも、なぜ取っておこうと思ったんだっけ?と
考えたら、忘れていた過去がよみがえってきて、
自分でもびっくりした。

子供たちが幼稚園の頃、お母さん同士のランチ会が
あり、最初に抜けた乳歯をどうしているかという
話題になった。
私は乳歯を取っておくという発想がなかったので、
正直に取ってないと答えたら、その場で皆に大笑い
されたのだ。

親しいメンバー同士で、日頃笑い合うことも多かった
が、え?そんなにおかしい?普通取っておくもの?と
戸惑った。
他のお母さんたちは当たり前のように初めて抜けた歯
を取っているようだったことが、むしろ驚きだった。
ひとりのお母さんに「じゃあ次は取っておかないとね」
と言われたのが、ランチ会のあともずっと耳に残った。

以来、通っていた歯科医院で乳歯を抜いたときには、
「持って帰りますか?」と訊かれるたびに「はい」と
答えるようになった。取っておきたかったわけではない。

当時は育児に自信がなく、みんながそうしているなら、
そうした方がいいのだろう、それが普通なんだろう、
という気持ちが強かったように思う。不思議なことに、
幼稚園に上がってからの方が、比較対象が増えたこと
で、ひとりで育てていた頃より不安が増してた気がする。

乳歯を取っておいたのは、取っておきたかったからでは
なく、「したいわけじゃないけどしなければいけない」
と思い込み、そうすべきだと言い聞かせていたからだ。

それに、「取っておかないとね」と言っていた彼女に
しても、最初に抜けた乳歯の話をしていたのであって、
全部取っておくという話ではなかったはずが、笑われた
ことを根に持って歯を取っておくということに執着して
しまったのかもしれない。

笑われたことが「抜けた歯を取っておくのが良い母親」
だという呪縛に変わり、取っておくことで良い母親の
一員になれるような気がしたのかもしれない。

15年近い時を経て、そうしたことに気づけたとき、
やっと、何の迷いもなく、すっと手放すことができた。
最後にきれいに並べ直して撮影したら笑顔が出てきた。