社内翻訳をしていた20代のころ、隣の席の
女性の先輩に「〇〇(私の旧姓)ちゃんって、
ときどきカルガモみたいに足をバタバタさせる
ことあるよね」と言われ、驚いたことがある。
「え、そんなことしてないですよ」と言っても、
「いや、してるしてる」と言われ、以来たまに
からかうように「カルガモちゃん」と呼ばれた
時期があった。
え、絶対してないですよ、してるってば、という
やりとりがあってから1週間くらい経ったあと、
これまでにやったことのない難易度高め(当社比)
の翻訳をまかされた。
私にできるだろうか…、でもやるしかない…と
逡巡している束の間、その場で足踏みをしている
自分がいた。え?これのこと?これのことだ!!
自分ではまったく気づいていなかったが、どうも
かなり難しめの仕事が来ると、態度に出さないよう
気をつけていても心の動揺が足に出ていたようだ。
当時は翻訳者になってまだ1年ほどで、社内に
翻訳者が1人しかいなかったこともあり、緊張と
プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、
日々目の前の仕事にがむしゃらに向かっていた。
それ以降は意識するようになったせいか、足踏みを
することはほとんどなくなり、そんなことがあった
のも忘れていたが22年ぶりにその出来事を思い出す
ことがあった。もう足をばたつかせはしなかったが、
ふとあの頃の自分に背中を押されたような気がした。